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会いたい気持ちが世界の中心

【映画】「二重生活」

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映画『二重生活』|2016年11月25日(金)Blu-ray&DVD発売 レンタルDVDも同時リリース

 

哲学というものにふれるのは高校の倫理の授業以来だけど、理論と統計・論者の深い思慮が密接に関わる学問ってあらためて面白いなという気持ち。

大学にもし行けていたらそういう勉強をしたかった。

 

主人公が秘密を解くピースを搔き集める尾行シーンは、台詞がない分やたらにでかい雑踏の音声、改札や券売機の雑音、監視カメラなどの

”画面として無機物な存在”が人間という存在を雄弁に描くのが面白かった。

ひとつひとつが舞台装置として演じているみたいに。

門脇麦ちゃん、カメラのレンズ並に無機質な目の演技が説得力ありすぎで怖いよ。

狂気的に尾行にのめり込んだ珠が人生で向き合えなかったもの=自己に論文という作品を通して泣いたり必死になって取り乱したり

他人を傷つけ家庭や生活を狂わせてまでも、生産性のない自己を変えようと情熱に突き動かされ

もがきながら筆を取るっていう滑稽さがめっちゃクリエイターのそれで心底羨ましいなとすら思った。

小説でも演劇でも映画でもなんでもいいんですけど、とにかく受け手としては

生ぬるいものじゃなくて作り手が命を削りながらとり憑かれたように破壊と創造、再構築をした傑作が観たい。

篠原先生のしていることはめちゃくちゃに悪趣味だけど気持ちはよくわかる。そんな自分も含めて創作の現場には心地のよい気味悪さが蔓延しているなと思う。

 

対象者の秘密を種明かしする部分だけが、見てればわかる事まで丁寧に説明されるのがちょっとくどかったかも。

でも篠原先生の奥さんが役者だったってとこだけは、人間ってそもそも他人から与えられた役割に沿って生かされてて

表面から見えない二重三重の部分=実態なのかなっていう核心を突かれる。

奥さんが役者として演じるもう一つの芝居がね、シェイクスピアを引用したものっていうわかりやすい皮肉も良いですよね。

 

生まれたままの姿では生きていけないからみんな人間を擬態して生きている。

鈴木くんが珠から離れていったのも、石坂さんが家庭に戻れたのも「恋人」「愛人」という役割が終わりを告げたから。

観終わったあと画面から仄かに香る、性衝動のあとの虚しさにも似た激情に

人間の表裏、陰陽、それらが交わる瞬間の二重生活という意味合いを沈思していた。