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会いたい気持ちが世界の中心

【舞台】リーディングドラマ「シスター」

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姉弟が繰り広げる会話から、生み出されるのは絶望なのか、希望なのか-。
二人が編み出す、静かな会話劇、はじまる。

リーディング公演「シスター」博品館劇場 2018年8月29日(水)〜9月2日(日)

 

ただ、静かに生を見つめる姉と死を見つめる弟の会話劇。

 

 

 

75分間たった2人で紡いでいく会話劇。お話としてはすごくシンプルでした。

自身が生まれる前に事故死してしまった姉の幽体と幼い頃から共生する弟。姉の存在を何度となく説明しても両親にすら理解してもらえず、なぜ自分にだけ姉が視えるのかわからないまま孤独な半生を過ごしてきた。聡明な姉は時に理解者として、時に指導者として弟の人生に寄り添う。

容姿も教養も友人関係にも恵まれず、唯一の趣味として詩作にふける弟は晩年、両親との死別を機に終活のため「遺書の書き方」を調べ始める。遺書は誰に預けるのか、身辺整理をどうするか、そもそも死後の世界とはなんなのかといった二転三転していく会話をきっかけに互いの死生観・人生観について姉と論議を交わし始める。

結論を言ってしまえば人生に疲れてしまった弟が服毒自殺を図り、それまで自室のテーブルで繰り広げられていると思っていた会話劇はすべてが担ぎ込まれた病室で起こっていた…というのが大まかな流れでした。

最初の方で全く同じセンテンスを姉と弟が交互に読み繋いでいく時間は死後の世界(姉がもとから居る世界)と弟の世界がリンクしている混沌を示唆していて、弟は一命を取り留め自殺に失敗するので最後の行だけが分岐点のように異なっていたんだなぁ…ということに観終わってから気づかされました。

 

緩やかに、それ以上でも以下でもない仄かな日常と回帰して終わる結末がはたして希望なのかと問われると…病院のベッドで愛した人にも関わってきた人でもなく、異世界にいる姉だけが涙を流すのって彼にとっては絶望とまではいわずともだいぶ酷なものなんじゃないかなあと俯瞰してしまった。

姉は終始「ほんとにこっち側に来たいんだったら別にとめないけど?だっていつかは来るでしょ。」みたいなスタンスであんだけ死生観や宗教観について知見がある人なのに、今すぐ死にてえ死にてえってスタンスの弟に唯一望んだことが生きてほしいでも死なないでほしいでもなくて「明日を迎えてほしい」なのがなかなか苦しい話だなと思った。望んでも得られないから弟に託すし、弟が明日を生きてくれる限りは姉も現世を生きられるわけだから理に適っているんだけど弟にとって明日を迎えることが「絶望」だったならその願いはどうなんだろう。 欲がないと言い切れるんだろうか。死者だからといって悟っているわけでも何でもなく、人間らしいエゴを抱えて生きてる亡霊なんだなと…運命共同体みたいな関係ではあると思うんだけど、根底にあるものがやっぱり死者と生者の価値観の違いなんだな〜って感じてしまった。

 

他の日は未見でわからないのですがなんとなく、演じる役者さんによって役の輪郭や雰囲気が変わる朗読劇なのかな?と感じて木崎ゆりあさんの姉は凛として慈悲深いシスター(修道女の方)納谷健くんの弟は延々と覚めない悪夢に迷い続けている子羊ちゃんみたいなイメージでした。

終盤に意味が出てくることに気づいたけどセットの机と椅子も全部黒、納谷さんとゆりあさんの衣装もモノクロで統一されてたのが喪服っぽいっていうか不穏で濃密な死の匂いをはじめから感じさせてた。弟の靴だけが紙一重でグレーだったことに気づけてそれがなによりも救いだったな…

年齢設定定かではないけ等身大か少し上くらいの青年を演じた弟役の納谷さんの、朗読劇ならではの「役」を作り込みすぎてない自然な語り口調を聴けたのが個人的には新鮮でした。

それまでの冗長気味な空気感が一転して緊迫感に変わるシーンからの白熱したお芝居、わたしは納谷さんのこういうのが観たかった!という意味ではめちゃくちゃ満足度が高かったです。まぁ、本人的にもやっぱり「当たって砕けた」「楽屋に戻ってすぐ、鈴木勝秀さんに「うまくなりたい!!」二人声を揃えて言いました。」と言ったブログの記述があった通り細かいミスやトチリ癖がテンポをどうしても乱してしまうので目立った印象はあったなぁというのが残念でもあったのですがそれもまた経験、研鑽。個人的には納谷さんの役作りと向き合う情熱が好きなのでどんどんこういう「演劇」らしい演劇で観てみたいなという気持ちがあります。貴重な公演を堪能できてよかったです。

 

余談。一概に客層のせいにしたらダメってわかってるけど、平日19時開演はしかたないけど遅刻してくる人もビニールカサカサ音も気になりすぎて心が3回くらい死んだよ。静粛に!!!頼むよ〜〜!!!映画観にきてんじゃねんだ。会話劇だから特に必要最低限のマナーに配慮がほしかったな。以上愚痴でした。